ふるーい小説なのに、文章が軽妙で今読んでも楽しい。日本製の飛行機なんて危なくて乗れないと言われていたのを、かつての軍用機開発スタッフが一所懸命国産旅客機を作って日本人パイロットの手で飛ばそうとしたり、進駐軍相手のキャバレー経営から日本を代表する観光バス・観光会社を作ろうとしたり……日本が復興のエネルギーにあふれていた雰囲気が感じられる。スッチーの採用条件に「容姿端麗」があったり、結婚したら即寿退社というあたりはどうしても時代を感じてしまうが、面白く読めた。
ドナテッラ・ディ・ピエトラントニオ『戻ってきた娘』読了。
生みの親と育ての親、そのどちらもの勝手な都合であちこちやったり取ったりされた娘と、それを受け入れる貧しくともたくましい妹。久々に「珠玉の」という形容詞をつけたくなる小説。この作家さんは小児歯科医兼業という変わり種らしいが、リピートかも。
柏木伸介『夏至のウルフ』読了。
四国が舞台の超ローカル警察小説。方言てんこ盛り、地方の美味しそうな名物も出てきて楽しいが、話によってはあーあ、最初から犯人丸わかり、みたいなのもあってちょっと緩い。
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あえてこの中で順位をつけるとすれば、第1位『戻ってきた娘』、第2位『あひる飛びなさい』、第3位『夏至のウルフ』かな。どれも面白かったのですが。